2023年08月20日

4K職場の夏

令和5年の夏は、猛暑日の日数更新が連日のニュ-スとなっています。
酷暑の中、暑い職場で働く人たちは大変ですが、私もかってはその一人でした


父は、戦前に時計店を開いたが空襲で焼失し、戦後は時計職人として家族を養うが、下請け修理の収入は低く、私たち家族は貧しい生活を強いられました。

貧しさから抜けるには、お客の時計を直接修理し妥当な収入を得るのが一番で、私が高校生の時
父は戦前からある建物の一角を借り、修理専門の小さな店を開きました。
長男の私は当然として手伝わされ、高校卒業後は 時計修理が私の職業 となってしまいました。

5年後に、一角を借り店を開いた建物は取り壊しとなり、父は下請けの時計修理職人に戻り、私は
デパ-ト系の 時計修理センタ- で、時計修理技術者 として働くようになりました。

時計修理を生業とし生き続けると思いましたが、私の20代後半にセイコ-がクォ-ツ時計を開発した
ニュ-スが報道されました。
製品化され市場に出たクオ-ツ時計は、正確で修理不要なことから瞬く間に普及し、時計修理の
収入依存度が高い街の時計店が次々と消えていきました。

30歳を直前の私は、時計修理の職を見切り、職探しを始め、求人募集の新聞広告を頼りとしました。

工場従業員・学歴不問・年齢30歳以下 の記事を見つけ応募し、簡単な面接で採用となりました。

出社した初日に安全研修を受け、翌日から現場に入り、4K職場 で働き始めました。

3Kは、きつい・汚い・危険 の頭文字からですが、私の現場は 臭い が加わっての 4K でした。

職場は鋳物の溶解炉がある鋳造工場で、中子(鋳物の空間部を作るもの)造形 の仕事でした。

中子造形は、ホルマリン樹脂がコーティングされた砂を、ブロア機と呼ぶ機械で金型に吹き込み、
電熱線が組み込まれた金型温度は 230~280℃ で、3~4分焼成でブザ-が鳴り金型が開き、成形された 中子(ワーク) が現れるものでした。
ワークを金型から取り上げ、金型をエア-掃除して直ぐに作動ボタンを押すと、1サイクルとなります。

1サイクルの間に、金型から取り出したワークに出るバリをヤスリで削り仕上げますが、ワークの
温度は100℃以上と高く、ホルマリン樹脂が焼けたガスは臭く、顔を背けながらの作業でした。

この職場の温度は、冬場でも30℃以上で、夏場は 雰囲気温度は40℃を超えており、1日に2回
の10分休憩は、水分・塩分補給に終わりました。
休憩所では、自由に麦茶・岩塩・梅干しが取れ、夏場には手当として牛乳瓶1本が配られました。

この職場で3年間働かせてもらいましたが、今年の猛暑日記録更新のニュ-スを聞くたびに、
4K職場の夏 を思い出す次第です。

                   〈 4K職場で、良くかじった梅干し
4K職場の夏





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    Posted by ボブ at 09:50│Comments(0)思い出・品
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